法人カード利用の大きなメリットとして、経理処理の簡素化があります。ビジネスカードを活用して決済することで、ウェブ明細(または郵送の利用明細書)として自動でデータが残るようになります。そのため、何日にどのような買い物をしたのか一瞬で把握できます。

このとき、「ウェブ明細があれば領収書が不要になるのか」と考える人は多いです。カード払いした後、自動で掲載されるウェブ明細のデータをダウンロードして印刷するだけで経費化が可能な場合、さらなる経費処理の簡素化を実現できます。

これについては、経費として認められることがあれば、そうでないケースもあります。そのため、個人事業主(フリーランス)や会社経営者は法人カード利用のときの明細の取り扱い方を理解しなければいけません。

そこで、ビジネスカード決済したときのウェブ明細の取り扱い方について解説していきます。

ウェブ明細のデータだけでは経費にできない

まず、大前提として経費化するためには、支払先が発行した「確かにお金を受け取ったことを証明する紙」が必須となります。これには、以下のようなものがあります。

  • 領収書
  • クレジットカード売上票
  • レシート
  • 請求書

私は会社経営者であるため、当然ながら顧問税理士がいます。顧問税理士と行う月一回の打ち合わせでは、こうした「支払いを証明する紙」を必ず添付しているのです。

例えば、以下のような書類になります。

経費化するためには、領収書である必要はありません。法人カード決済したときにもらう「クレジットカード売上票」でもいいし、レシートでも問題ありません。得意先からの請求書も問題なく経費化の対象になります。

ただ、ここに「法人カード決済によるウェブ明細のデータ」は入りません。クレジットカード払いの後、自動で記録される明細データだけでは経費処理をしてはいけないのです。

なぜウェブ明細のデータでは経費化できないのか

クレジットカード会社が発行する明細データだけで経費処理をしてはいけないのは、当然ながら理由があります。経費化するためには、以下の情報が分からなければいけません。

  • 支払先の名前
  • 連絡方法(住所、電話番号、メールアドレスなど)
  • 支払日
  • 支払金額

クレジットカードの明細データであれば、「支払先の名前」「支払日」「支払金額」については把握できます。例えば、以下は私が活用しているJCB法人カードの明細データです。

こうした情報が掲載されるわけですが、残念ながら抜け落ちている情報があります。それは、支払先への連絡方法(住所、電話番号、メールアドレスなど)です。必ず支払先の住所や電話番号を含め、連絡先が明記されていなければいけません。

連絡先の情報がない明細は不備なので経費化できません。そのため、ウェブ明細だけで経費処理をしてはいけないのです。

また、経費化するにはカード会社が発行したものではなく、支払いを受けた先が発行した書類である必要があります。これも、クレジットカード明細書のデータだけでは経費処理をしてはいけない理由になります。

ネットショッピングはどうすればいいのか

しかし、領収書や請求書をもらえるケースばかりとは限りません。現在はネットショッピングが普通であり、ウェブ上から申し込みをしてサービスを受けるのは普通です。そうした場合、どのようにして経費化すればいいのでしょうか。

これについては、前述の通りカード会社の明細書データだけでは不十分なので、ネットショッピングで申し込みをした後に自動返信されるメールを印刷するようにしましょう。

例えば、以下はANA(全日空)に申し込みをした後に届いたメールですが、こうしたものを問い合わせ先が分かるように印刷するようにするのです。たとえ自動返信メールに住所や電話番号、メールアドレスなどの記載がなかったとしても、公式サイトのURLが掲載されていれば問題ありません。公式サイトのURLが問い合わせ先になるからです。

これらの印刷物とウェブ明細データの2つがあることで、問題なく経費処理することができます。私も顧問税理士に対して、ネットショッピングについてはいつもこうした書類を用意して見せています。

定期購入のサービスや商品は明細だけで問題ない

ただ、ウェブ明細だけでも問題ないケースがあります。それは何かというと、毎月の支払いが発生するものになります。

例えば私の場合、サイト運営を基本とするIT企業なので毎月必ずサーバー代が発生します。また、Photoshop(画像処理ソフトウエア)の使用料を月額払いにしているのですが、毎月1,300円ほどを支払っています。これらについては、特に領収書などはなくウェブ明細のデータだけで経費処理をしています。

もちろん、初回の支払い分については自動返信メールを印刷して保管するようにしています。税理士との打ち合わせでも、そうした書類を渡します。

ただ、二回目以降は特に支払先から通知が来ることはありませんし、実際のところ書類なしで経費処理をして何も問題ありません。カード会社に記載されるウェブ明細のデータを印刷するだけで問題ないのです。

個人事業主・会社で領収書がないと税務調査で否認される

なぜ、経費化するときに領収書類を残しておく必要があるのかというと、それは税務調査が入ったときに否認されるからです。領収書などがなく、明細データだけしかない場合は税務署の調査で「これは経費として認められない」と否認されてしまうのです。

やはり、クレジットカード会社の明細だけでは不十分です。金額が低ければ問題ありませんが、高額の買い物については税務調査のときに確実に目をつけられます。

例えば、以下のようなカード会社の明細データがあったとします。

  • 3/12 HOYODO 300,000円

30万円の支払いになりますが、「支払先:HOYODO」では何のことだが分かりません。これが高級クラブの接待代なら経費になりますが、家族の旅行ツアー代金だと経費化できません。そのため、税務署は支払先について確認してきます。

もし、税務調査のときに領収書類が残っておらず、過去メールにも支払先情報が残っていなかった場合、残念ながら全額を否認されます。そのため、支払い先から受け取った書類については確実に残しておく必要があります。

クレジットカードの明細データの確認方法

法人カードを発行している主なカード会社としては三井住友カード、JCB、アメックス、クレディセゾン、オリコなどがあります。こうした会社のビジネスカードは非常に人気です。

実際の明細を確認する方法としては、カード会社から郵送される書類でもいいですし、私の会社ではすべてウェブ明細で管理しています。

例えば、私はVisaの大手である三井住友カードを保有しています。この法人カードが三井住友カード ビジネスオーナーズです。例えば、三井住友カード ビジネスオーナーズを利用してウェブ上でログインするとき、Vpass(ブイパス)という会員サイトにログインする必要があります。

現在、私はJCBやアメックス、クレディセゾンなど、多くのクレジットカードを使いこなしています。ただ、ここではVisa大手の「三井住友カードでの明細データ確認方法」を解説していきます。基本的には、どの法人カードでも会員サイトを活用した明細確認方法は同じです。

・会員サイトにログインし、利用明細を確認する

JCBやアメックス、クレディセゾン、オリコを含め、まずは会員サイトにログインしなければウェブ明細を見ることはできません。そのため、必ず新規登録して会員サイトにログインできるようにしておきましょう。

三井住友カードの場合、以下のような会員サイト(Vpass)があるのでログイン情報を入力していきます。

クレジットカードを発行したばかりのときは新規会員登録しないといけないため、最初の新規登録は必ず行うようにしましょう。

その後、「カード利用状況」「ご利用明細」などの項目がウェブ画面上のどこかにあるのでクリックするようにしましょう。三井住友カードの場合、以下の場所にあります。

その後、利用明細の中で「確認したい月」をクリックするようにしましょう。例えば、8月の明細を知りたいのであれば、「〇〇年8月の利用明細」をクリックするのです。こうして、ウェブ明細が確認できるようになります。

なお、各カード会社のログイン用の公式サイトとしては以下のようなものがあります。

ちなみに、カード決済した後にウェブ明細へ反映されるまでには2~3日の時間差があります。これについては、そういうものだと考えましょう。

ビジネスカードの明細で管理を行う

領収書などは残す必要があるものの、法人カードを活用すればウェブ明細に記録が残るため、明細書に載るものについてはすべて経費化すべき項目になります。

個人クレジットカードで支払っていると、個人払いと法人払いの明細がごちゃ混ぜになるため、経費化のし忘れが必ず発生するようになります。特にネットショップのような領収書類がないものであると経費精算を確実に忘れます。

そうなると無駄に利益額が大きくなり、法人税(個人事業主の場合は所得税)が増えてしまいます。節税や経費処理の簡素化の面では、ビジネスカードを使わない方が圧倒的に損をします。

また、法人カード払いでなければ経費として認められないものも多いです。領収書を残す必要はあっても、個人カードとは別にビジネスカードを活用する方が節税できるようになるのです。

こうしたことを理解したうえで、ウェブ明細や郵送の利用明細書でカード決済を管理できる法人カードを活用するようにしましょう。人気の法人カードとしては、以下のようなものがあります。

三井住友カード ビジネスオーナーズ

初心者向けの法人カードとして、三井住友カード ビジネスオーナーズがあります。Visa大手の三井住友カードが発行する法人カードであり、明細データを確認するには会員サイト「Vpass」への登録が必要です。

年会費は永年無料です。カード利用枠は~500万円(所定の審査あり)であり、還元率は0.5%となっています。

なお、登記簿謄本や決算書の提出が不要なので非常に審査が甘くなっています。登記簿謄本が必要ないため、カード会社はあなたのビジネス状況を把握できません。そのため、ビジネス未経験の個人事業主や創業間近の赤字企業であっても問題なく審査に通過します。

ビジネス初心者にとって審査の面で非常にやさしい法人カードが三井住友カード ビジネスオーナーズです。さらにタクシーチケットの手配ができたり、新幹線予約がお得になったりするサービスも魅力的です。また、国際ブランドはVisaかMastercard®を選べるので全世界でカード決済できます。

JCB法人カード

初心者用の法人カードではありますが、審査基準が少し高くなっているビジネスカードがJCB法人カードです。JCB法人カードではMyJCBという会員サイトに登録することで明細データを確認できます。

年会費は1,375円(初年度無料)のビジネスカードです。入会特典などを考慮すると、実質的に3年分は年会費無料になります。

利用限度額は30~100万円と普通です。また、年会費の安い法人カードなのでポイント還元率も0.5%と一般的です。

特別に何かが優れているわけではないものの、非常にスタンダードなビジネスカードがJCB法人カードです。初めてビジネスカードをもつとき、利用する人が多いです。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

クレディセゾンが発行するビジネスカードとして、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。クレディセゾンのNetアンサーという会員サイトで明細データを確認できます。

プラチナ法人カードであるものの、年会費は22,000円と低めです。そのため、コストパフォーマンスに優れます。

最大の特徴は高還元率を実現できることです。還元率1.125%の法人カードであり、ポイント還元率のことを考えると、カード決済額が月17万円以上(年間200万円以上)の場合はセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードを利用したほうが圧倒的に得です。

プラチナカードなので空港ラウンジを利用できたり、限度額が非常に高額だったりします。利便性に優れた法人カードがセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードです。

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