個人事業主や会社経営者など、ビジネスをしていると数年に一回の頻度で税務調査という非常に嫌なイベントがの存在あります。税務調査では、不自然な会計処理をしているとその項目を指摘され、追徴課税される可能性があります。

法人カードを利用している場合、「領収書がなくても、利用明細だけで問題ないのか」「クレジットカード利用によるポイント付与はどのように会計処理すればいいのか」という疑問を生じます。

そこで、税務調査で指摘される前に税金やビジネスカードの性質について知り、あらかじめ対策を練っておく必要があります。

法人カードを活用し、節税するには適切な方法を採用しなければいけません。ここでは、税務調査対策で必要となる法人カードの知識について記していきます。

ビジネス利用のカード決済はすべてビジネスカード

まず、大前提としてビジネス利用の商品やサービスを購入する場合、すべて法人カードで決済するようにしましょう。

お金を支払うとき、「現金払い(コンビニ払いなどを含む)」「銀行振込」「カード決済」と主に3つの方法に分かれます。このうち、カード決済するときは基本的にすべて法人カードを用いるのです。

個人クレジットカードを活用してもいいですが、その場合は全額経費にできないことが多々あります。携帯電話代や福利厚生費の支払いなど、ビジネスカード決済でなければ経費にならないケースが存在するのです。

これは、個人事業主についても同様です。いずれにしても、ビジネスに関係するもの(経費で落とすことを考えているもの)については、すべて法人カード決済にするようにしましょう。

例外として、出張旅費規程を作っている会社であると、交通費やホテル代で法人カードを使わないようになります。

ただ、あくまでも例外であるため、出張旅費規程をこれまで作ったことがなく「そもそも規程って何だ!?」という個人事業主や会社経営者の場合、経費支払いはすべて法人カードにするように覚えておくといいです。

法人カードは領収書不要であり、利用明細だけで問題ないのか

法人カード決済をするとなると、請求は自動でウェブ上に利用明細が出てきます。こうした利用明細があれば、領収書を取っておかなくても問題ないのでしょうか。

結論をいうと、利用明細だけでは不十分です。利用明細には「支払日」「支払金額」などは記載されているものの、その他の項目がわからないからです。

経費として落とすためには、「支払日」「支払金額」「支払先(名前、住所など)」が書かれている必要があります。このうち、ウェブ上の利用明細では支払先が不明確であるため、利用明細だけをプリントして保管しているだけでは不十分だといえます。

そこで、たとえビジネスカードで決済したとしても領収書は必ず残すようにしましょう。領収書がなければ、基本的には経費として落とすことができません。

レシートやクレジットカード売上表は領収書の代わりになる

ただ、領収書が手元にないことがあります。そうした場合、経費として落とすのは諦めなければいけないのでしょうか。

そのようなことはなく、レシートやクレジットカード売上票を利用しても問題ありません。経費にするときは必ず領収書である必要はなく、レシートやクレジットカード売上票でも代用できるのです。レシート、クレジットカード売上票には「支払日」「支払金額」「支払先」が明確に記載されているからです。

なお、最も良いのは領収書とクレジットカード売上票の両方を取っておくことがあります。私はいつも領収書の宛名を空欄でもらうのですが、以下のようにカード払いの時は領収書とクレジットカード売上票の2枚をホッチキスで止め、保管しています。

これら2枚の書類があれば完璧です。ただ、領収書がなくクレジットカード売上票だけで経費精算しても問題ありません。

また、領収書やクレジットカード売上票すらないことがあります。例えば、私の家の近くにあるスーパーはレジでの支払いが非常に簡素化されており、クレジットカード払いをしても領収書やクレジットカード売上票が出てきません。

そのため、このスーパーで事務用品を購入しても領収書やクレジットカード売上票をもらうことは不可能です。ただ、レシートが出てくるのでレシートを保管するようにしています。レシートも領収書の代わりになるので問題ありません。

レシートすらもらえない場合の対策方法

それでは、領収書やクレジットカード売上表、さらにはレシートすらもらえない場合はどうすればいいのでしょうか。経費精算をあきらめるしかないのでしょうか。

例えば、電車の切符は改札のときに切符ごと吸い込まれるので証拠(領収書やレシートなど)が残りません。モバイルSUICAなどで電子マネーをチャージする場合も同様に、レシートなどは発行されず請求がウェブ明細に記載されるだけとなります。法人ETCカードを使った場合も同様です。

こうしたとき、現金払いのときは紙の書類に「支払日」「支払金額」「支払先」を記載して残しておきます。一方で法人カードの場合、ウェブ明細だけで問題ありません。

本来、ウェブの利用明細だけでは経費にならないものの、レシートすらもらえないという特殊な事情がある場合はきちんと考慮されます。税務調査のとき、「領収書やレシートをもらえなかったため、法人カードの利用明細で代用した」と説明すれば問題ありません。

ネットショッピングで法人カード決済する場合の対策

ただ、ウェブ上の利用明細で代用できるのはあくまでも「支払いの証拠がまったく残らないケース」という特殊な事情があるときだけです。それ以外の場合は必ず支払いの証拠を残すようにしましょう。

例えば、ネットショッピングによって商品やサービスを利用した場合、領収書などは発行されず「ご注文ありがとうございます」というメールだけが届くことがあります。こうしたとき、注文時に届く以下のようなメールをプリントアウトするようにしましょう。

領収書やレシート、クレジットカード売上表だけが支払いの証拠になるわけではありません。メールで送られてくる文面であっても大丈夫です。こうした帳票類をきちんと残しておけば、税務調査のときに指摘されることはありません。

個人クレジットカードで支払ったときはどうなるのか

それでは、間違えて個人クレジットカードで決済したときはどうなるのでしょうか。

個人カードで支払ったものについては、立て替え払いとして仕訳処理すれば問題ありません。領収書など支払った証拠があれば問題なく経費で落とすことができます。

ただ、前述のとおり個人カードでの支払いでは経費にできないケースがあります。そのため、経費で落とすことを考えている場合はすべて法人カード決済にした方が無難です。

また、個人カードで支払っていると「個人的な支払い」と「ビジネス利用での支払い」がごちゃ混ぜになります。

この場合、たとえ領収書を残していたとしても、どの支払いが該当するのか探さなければいけません。一方でビジネスカード支払いであると、明細書の請求に載っているものはすべて経費で落とす項目です。

また、ネットショッピングなどレシートすら残らない場合、個人カードで決済していると経費精算を忘れることがあります。個人カードの利用明細に個人利用とビジネス利用の買い物がごちゃ混ぜになっているからです。

これでは適切な節税を行えないため、無駄に利益額が大きくなって法人税額が高くなってしまいます。

経費精算の忘れが発生しないためにも、会社組織だけでなく個人事業主・フリーランスを含めすべてのビジネスマンが法人カードをうまく使い分けなければいけません。

法人カード利用によるポイントへの会計処理

経費精算をするとき、領収書などの書類を残しておけばよいことが分かりました。ただ、ネットショッピングの場合は内容を把握できるメールをプリントすればいいなど、代用方法はいくらでもあります。

ただ、税務調査のときに心配になる他の要素として「法人カード利用でつくポイント」があげられます。このときのポイントは税務調査で指摘されないのでしょうか。また、会計処理はどのようにすればいいのでしょうか。ポイントは社長個人が勝手に利用できるのでしょうか。

厳密に会計処理をする場合、カード利用によるポイントの勘定科目は「雑収入」になります。仕訳をするとき、付与されたポイントを会社の収入として計上するのです。

では、そうした仕訳が必要なのかというと、実際のところ行わなくて問題ありません。法人カード利用のポイントを会社のお金(雑収入)として会計処理している真面目な会社など、世の中にほぼ存在しないのです。

それでは、どうするかというとほとんどのケースで社長個人が自由に使っています。さすがに大企業では問題かもしれませんが、世の中に存在する99%以上の中小企業では、法人カードによるポイントを経営者が個人的に活用しているのです。当然、これは個人事業主・フリーランスでも同様です。

本来は会社のお金を使ってたまったポイントであるため、社員の福利厚生費などに充てるのが正しい使い方です。ただ、仕訳で雑収入として計上し、雑収入(ポイント)を使うときに再び会計処理が必要になると、経費精算を含め会計処理が非常に複雑になります。

ビジネスカードを導入する最大のメリットは経費精算の簡素化であり、会計処理の負担を少なくすることにあります。「社員用に追加カードを発行することで、経費の建て替え処理をなくす」「個人カードと法人カードを分けることで、ビジネス利用の項目を明確化する」などで経費精算を簡単にするのです。

ただ、ポイントについてわざわざ会計処理していると、非常に煩雑な作業になって「経費精算の簡素化」という法人カードを本来の目的を果たせなくなります。

こうしたことがあるため、法人カードによるポイントを適切に会計処理している個人事業主や法人はほぼ存在しないと考えてください。そのため、たまったポイントを社長個人が利用しても税務調査で指摘されることはないのです。

ポイントのため方に注意する

個人事業主や一人社長、家族経営の会社であれば、ポイントを好きに使って問題ありません。

ただ、何人かの社員を抱えている経営者の場合、社内の関係を考慮しなければいけません。いくら税務調査で指摘されないとはいっても、社内で「社長は法人カード利用のポイントを好きに使っている」と思われてはいけないのです。

そこで、何人かの従業員を抱えている場合はポイントの使い方やため方を考えるのです。このとき、お勧めの方法として「ポイントをギフトカードにする」「ポイントをマイルにする」ことがあります。

カード決済してたまったポイントを利用するにしても、「ポイントを商品(景品)に変え、このときの商品が会社に届く」などの状況は好ましくありません。「この品物は何だろう?」と受け取った事務員が不振に思ってしまいます。ただ、ギフトカードであれば「知り合いから送ってもらった」と言い訳できます。

また、マイルでポイントをためる方法も有効です。マイルは個人にしか付与できず、会社で保有することはできません。そこで、ビジネスカード利用によるポイントを「社長個人のマイル」として付与するようにしておくのです。

たまったマイルは航空券に変えることができ、家族旅行など経費で落とせないものに使うことができます。もちろん、航空券以外にショッピングでも利用可能なので好きなものに交換できます。

こうしたことを考慮したうえで、法人カードのポイントまで理解して利用する法人カードを選ぶ必要があります。

税務調査対策で適切な会計処理を実施する

このように、法人カードを使うときは適切な会計処理方法が存在します。効果的な節税をするためにも、基本は法人カードで決済を行い、たまったポイントは社員にバレないように個人利用することを考えましょう。

それでは、実際にどのようなビジネスカードを利用すればいいのでしょうか。領収書やクレジットカード売上表など、帳票類の保管はどのクレジットカードでも行うべきことは同じです。そのため違いがなく、税務調査対策という点では法人カードごとに違いはありません。

ただ、たまったポイントをどのように有効活用するのかについては大きな違いあります。

カード利用によるポイントは社長が私的利用できるため、非課税のお金と同じです。そこで、ポイント還元率が良かったり、マイルでためることができたりする法人カードを選ばなければいけません。そうしたビジネスカードには、以下のようなものがあります。

セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

プラチナカードであり、ハイステータスな法人カードとしてセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードがあります。年会費22,000円であり、プラチナカードとしては低い金額です。

特筆すべきはマイルでためたときの還元率が非常に優れており、JALマイル還元率1.125%です。

たまったポイントをマイルに交換し、経営者が好きにポイントを利用したい場合に効果的です。追加カードのポイントも経営者個人のマイルに集約できます。

また、プラチナカードなので「空港ラウンジを使える(プライオリティ・パス付帯)」「海外旅行傷害保険が優れている」「コンシェルジュサービスがある」など、プラチナ法人カードならではのサービスがあります。

しかも、プラチナカードなのにビジネス素人の個人事業主や創業間もない法人であっても申請できるほど審査に甘いという特徴があります。プラチナ法人カードの中でもトップクラスで審査がゆるいため、誰でも問題なく申請できるビジネスカードです。

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